日記に出した突発ss、小説になりそこなったネタ短文なんかをちまちま収納していきます。
上に行くほど新しいです。

 

 

「紅い闇」
ゲオリク独白 (吸血鬼ゲオ×インキュバスダッシュパロ)

 

 「ね、オレと遊びましょうよ。 イイ夢、見せて差し上げますぜ?」

 金色の瞳を悪戯っぽく伏せて、ちろりと舌なめずり。
 鼓膜を優しくくすぐる、耳障りのよい低音。
 暗闇で誘蛾灯に群がる虫のように、人々は面白いほど簡単に彼の手を取ってゆく。
 ―――ほのかな緋色の灯りのすぐ後ろには、黒々とした真の闇が口を開けていることにも気付かずに。


 「今夜は大漁でしたぜ! これで又、旦那にとびきりの血をご馳走できまさあ」

 そう言って嬉しそうに、心から嬉しそうに笑う顔がまぶしい。
 一夜の甘い夢と引き換えに、人間から精気を吸い上げる夢魔(インキュバス)。
 夜ごと彼は獲物と交わう、美味そうな精の持ち主であればそれこそ雄とも雌とも見境をつけず。
 新鮮な養分を吸うことで、彼の血はより甘くまろやかに、人を惹きつける容貌はいっそうの艶を得て。
 そうして出来上がった極上の夢魔を、今度は俺が戴くのだ。
 しなやかな首に牙を立て、たっぷりの精を吸った濃厚な美味に酔いしれる。

 最高に満ち足りたひととき…、のはずなのだが。


 「…っ…… さあ、もっと好きにして。 オレは、あなたのものですから―――」

 ―――その科白、1時間前におまえを抱いていた男にも言ってやったんだろう?
 『食事』の最中でさえ、そんな無粋な考えに捕らわれる己の浅ましさに呆れる。
 おまえが餌と呼び、一夜を共にする精気提供者たちと、今こうしておまえを抱く俺。
 おまえの中では、何が違うのか。
 毎夜のように抱き合って肌を重ねても、勝手な不安はいつまでも胸の奥にくすぶり続ける。
 本当に勝手だと思う、我ながら。

 彼が餌を食い漁るのは、血の旨さにせっせと磨きをかけるのは、誰のためだ。
 そもそも、殺人すら犯したことのない只の人間だった彼を、こんな闇の眷属におとしめた張本人は。

 僅かな罪悪感と、それ以上の充足感と、いやまだ足りぬと貪欲に喚き散らす飢餓感と。
 ごちゃ混ぜに入り乱れた感情の渦が急かすままに揺さぶり、打ちつけ、時には噛み付いて。
 貪られるだけの彼には苦痛しかないはずなのに、必死でしがみついてくるのが愛しい。
 首筋から滴り落ちる血雫。
 暗いシーツを這いつくばる髪。
 夜を押しのけて、そこだけがまるで華のように、痛いほどに鮮やかだといつも感じる。

 闇を裂く、闇に咲く、堕ちてなお紅い緋い夢魔(インキュバス)。
 いっそ中身をぶちまけて丸ごと平らげてしまえたら、俺はおまえとひとつになれるかな。
 そんな、反吐が出そうな戯言にさえおまえは微笑んで
 「旦那になら、構いませんよ」
 なんて平然と返してくれるだろうから、死んでも口にしてはやらないけれど。




≫「悪魔城○ラキュラ ラジオクロニクル」で諏訪部さんが夢魔役と知って、つい衝動のままに。
うん、確かにあの声はエロいよね^^^^ アガシオンよりインキュバス向きだと常々私も思っ(ry

それにしても、なんで私の書くこいつらはこんなにヘタレでウザくてもどかしいんでしょうか。
一歩踏み出せば両想いなのにお互い遠慮しすぎな関係。(そして結局バカッポーというこのウザさ!^^^)

08.09.11




 


 

「瞳をあけてみるゆめ」
ダッシュウッド独白 (某様の連載小説「実力行使」リスペクト)

 

 ねえ、
 気まぐれに手を伸ばさないで、優しいあなた。
 あなたにとっては、野良犬に食事の残りを放り投げるような軽い好意なのだろうけど、
 飢えすぎた野良犬は、たったそれだけでも、あなたに愛されていると勘違いをしてしまう。
 だから、
 気まぐれに手を伸ばさないで、微笑みかけないで、カケラほどの期待もオレに与えないで。
 優しくて、残酷なあなた。


 報われない片恋のうちは、安全圏。
 たとえば地上にさえ自由に出られないオレが空を飛びたいと願うような、それは単なる夢にすぎないから。
 夢は夢のままでいい。 心密やかにあなたを想っていられれば、それだけでいい。 綺麗なあなたと汚れたオレとじゃ、元々釣り合うはずなんてないのだから。 そう言い聞かせて、自虐の殻で己を守っていられた。
 実際、オレは幾度とも数え切れないほどあなたを抱いて、あなたに抱かれた。 夢の中で。
 目覚めた時の余韻はどうしようもなく虚しく、けれど幸せだった。
 夢はいずれ必ず終わるものだから。 ひとときの至福に酔う程度がオレには似つかわしい、そう思っていた。


「抱かせてくれ。 俺はお前が欲しくなった」


 ある時あなたが、夢の中とまったく同じに美しい声で、そんなことをのたまった。
 …そんな馬鹿な。 これは現実だ。 決して手に入らないかわりに失うこともない、現実のあなたのはずなのに。
 オレはかつてないほど動揺し混乱し、そして…、戦慄した。
 ついに夢が現実を浸蝕しはじめたのかと思うと、慄えが止まらなかった。


 夢が夢であるうちは、安全圏。
 それが現実になれば、夢は悪夢に変わる。
 自分には過ぎた望みを手にしてしまった瞬間から、喪失への恐怖がはじまるのだ。
 ―――今ここであなたを手に入れたとしても、あなたはいずれオレに飽きて、他のもっとあなたにふさわしい誰かを抱くために、オレのもとを去るだろう。
 ひとたびあなたの温もりを知ってしまえば、必ずやってくるその別れの瞬間に、ひたすら怯えて生きていく他はなくなる。
 毎日、震えながら最期の宣告を待つ死刑囚のように。
 果ての見えない恐怖は続く。 あなたがオレを捨てる、その時まで。


「…なら、抱いてみますかい?」


 それでも愚かなオレには、愛しいあなたから伸ばされる手を拒めるはずなどなくて。
 反射的に喉を滑り落ちた自分の声こそが死刑宣告だなと、まるで他人事のように思った。




≫日記突発、「臆病な野良犬の独白」改め。
シチュエーションとかは某様サイトの素敵ssを参照。
めくるめく萌え空間でした! 某様、いつもご馳走になってます〜これからもよしなにvv(*´∀`*)


08.08.27

 


 

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