まず、第三弾もとうに発売済みだというのに、ダシュゲオダシュスキーのバイブルとも言うべき暗黒編ばかり
偏って聴きまくっております事情をお察しの上、寛大なお心でご容赦頂けますと幸いでございます…。(平伏)
その暗黒編で…感想というわけではないですが、個人的に少々書き留めておきたいことが見つかりましたので、
自分用メモ代わりにこちらのTalkページを利用させて頂きます。(やや長くなりそうです故…<またか!)
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さて、本題に入りますが。
暗黒編を通して聴いていると、「迎え」でのサンドイッチ伯爵(以下「S伯」と略します)の一連の言動に、どうにも
拭えない疑問点がいくつか残りました。
「何故、あの場にS伯自身がわざわざ出向いてきたのか?」ということと、
「何故、ゲオリクに一方的に責任を負わせると言ったのか?」の2点です。
ダッシュの職業からして、一日や二日で結社に戻ってこれないことは特に珍しくもないはず。いくらS伯が彼を
頭から子供扱いしているとはいえ(年齢差からすると実際、子供なのでしょうが)、それほど血相を変えて探しに
来なくてもよかったように思えます。党首が結社を離れるには、何かと前準備も必要で面倒も多いでしょうし。
なのに、彼があの場に現れたのは何故か。…メフィがダッシュに報復するために魔力で呼び寄せた可能性も
大きいですが、普段はメフィの魔力の及ばない結社内の一室(本編参照)にいるS伯のことですから、メフィの
関与だけがすべての理由とも思えません。…となると、他に彼を動かした別の理由があったのではないか?
また、ゲオリクの屋敷でダッシュとゲオリクが関係を持ったことを知り、二人のそれぞれの言い分を聞いた彼は
何故かゲオリクにのみ責任を負わせると宣言しています。ダッシュの言うとおり、理不尽きわまりない発言です。
後でどのみちダッシュに罰を与えるつもりなら、この場で一時的にダッシュを庇うような言動をしたのは何故か?
一番大きな理由は「ゲオリクに『貸し』を与えることで、後々結社に来なくてはならないように仕向けた」ということ
でしょう。…しかし、後でリュースに対してぶちまけていた本音を聞く限り、彼は打算以前に最初から「ゲオリクが
ダッシュウッドを一方的にそそのかし、襲ったのだ」と確信していて、それを疑っていなかったようにも思えます。
ゲオリクに対するダッシュの感情を知らないため、とも考えられますが、これも他に何か別の理由があるはず。
…との疑問が残ったわけですが、これをS伯の立場にたって、順を追って考えてみようとの思いに至りました。
元々の言動がかなり常識外れな方なので、論理的に考えること自体が無謀な試みのような気もしますが…
彼がいわゆる「悪の価値観」に基づいて行動する人、という前提を踏まえて考察を進めていこうと思います。
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まずは1つ目の謎、「何故、あの場にS伯自身がわざわざ出向いてきたのか?」ということ。
これは最初に…遠回りになりますが、「事前にリュースが熱を出して倒れたこと」を踏まえる必要があります。
倒れたリュースの介抱のため、ダッシュが薬を求めて奔走していたことを、仮にS伯が知らなかったとしましょう。
しかし、少なくともリュースの体調不良に関してだけは彼は知っていたはずです。(S伯とリュースは○○な関係
ですから…) そして同時にダッシュが不在となれば、ダッシュがリュースに惚れていると思い込んでいるS伯なら
「あの男がリュースを放っておくわけがない→今頃はどこかへ薬を探しに行っているだろう→となると、行き先は
得意先であり、医者でもあるゲオリクのもとに違いない」というところまでは、容易に想像できることになります。
…しかし、ここでS伯の予想を外れるのが、ダッシュに好意で薬を渡したゲオリクの行動です。
S伯の「悪の価値観」で考えるなら、借金の取立人であるダッシュがいくら下手に出ようが、ゲオリクがすんなり
薬を売ってくれる、ましてや譲ってくれるなどということは到底ありえません。鼻で笑われるだけです。仮に薬を
売ってくれたとしても、それを理由に弱みを握られるのが関の山。
そして後日、ダッシュがゲオリクからの薬を持ってリュースのもとへ届けたことをS伯が知る知らないに関わらず、
ダッシュがゲオリクから薬を入手する術は「盗む」か「弱みを晒しても頭を下げて売ってもらう」か、「逆に借金を
理由に、いつものチップと同じ要領で巻き上げる」かの3つしかないことになります。(S伯の思考に基づくなら)
そして、一連の騒動の後。再びゲオリクの屋敷へと向かったはずのダッシュの消息が、ぷつりと途絶えました。
上記の3つの方法のどれかで薬を手に入れようとしたダッシュが、ゲオリクのもとへ行ったまま、数日(少なくとも
一日以上かと思われます)経っても戻ってこない。ここでS伯の脳裏に浮かぶであろう可能性は
・ダッシュが薬を盗んだ、もしくは借金を理由に巻き上げた場合
→ダッシュウッドは逆上したゲオリクによって殺害された。
・弱みを晒しても頭を下げて売ってもらった場合
→ダッシュウッドは握られた弱みをチラつかされ、結社に帰りたくても帰れない状況に陥っている。
どちらにしろ、放置すべからざる災難がダッシュの身に降りかかったことになり、流石のS伯も心配になります。
それで「ゲオリクに会って真相を問い詰めねばなるまい」と彼自ら腰を上げ、ゲオリクの屋敷へ出向いたのです。
(ゲオリクに対して非常に失礼な想像をしているようですが、S伯はダッシュの人格に関しては把握していても
ゲオリクに関してはほとんど知らないはずなので、どうしても自分自身の価値観と行動パターンに基づいてしか
想像の範囲が及ばないと思うのです)
続いて2つ目の謎、「何故、ゲオリクに一方的に責任を負わせると言ったのか?」について。
S伯の予測では、上で示した2つの可能性のうちどちらかしか有り得ないはずなので、よもや倒れたダッシュを
ゲオリクが介抱し、甲斐甲斐しく世話を焼いてやり、その挙句にダッシュに襲われたなどという展開は予想だに
できなかったと思われます。(ちなみに私もできませんでした←聴いた時は嬉しいサプライズ。笑)
…それが、いざゲオリクの寝室の前まで来てみると、今まさに情事の真っ最中とおぼしき部下とゲオリクの声。
一体どういうことなんだ、と混乱しつつも、他の部下達の手前。取り乱すわけにもいかず、つとめて冷静を装い
ゲオリクの寝室へ家宅捜索(と称した不法侵入)に乗り出します。
情事の余韻フェロモン漂わせまくりのゲオリクに食指が疼きながらも、まずは真相を究明せねばなりません。
ゲオリクの言い分は「同意のもとに互いを求め合っただけのこと」。そこへ隠れていたダッシュが出てきて、
「ゲオリクの旦那は私が一方的に襲いました」と言い出します。二人の説明が明らかに食い違っています。
ここでS伯は、自身の「悪の価値観」に基づいた上で、どのように彼らの言い分を検証するでしょうか。
まず、仮にダッシュの主張が真実であるとしましょう。その場合、ゲオリクは純然たる被害者の立場にあるはずで
「同意のもとに…」などと自身の共犯を示唆してまで、ダッシュを庇う必要や理由などはどこにもないはずです。
なにせダッシュは借金の取立屋にすぎず、ゲオリクにとっては鬱陶しい存在以外の何者でもないのですから。
むしろ「貴様のところの部下にこんな無礼を働かれた。この落とし前はどうつけてくれる」と彼の上司であるS伯に
責任追及し、それを口実に借金の減額を迫るなど、自身に有利な状況を作る「怪我の功名」にもなりうるのです。
ゲオリクがそれをしようとせず、かえってどこか後ろめたそうに「同意のもとに…」などと供述しているということは、
ダッシュの言い分が真実ではないという明確な証拠。
つまり、今回の状況は
「ゲオリクがダッシュの弱みにつけいり、彼をたらしこんでベッドへ誘った結果」
に他ならず、ダッシュが彼を庇うような発言をしているのは、ゲオリクと寝たことで彼に丸め込まれ、いつものごとく情が移ってしまって、事を穏便に済ませようとしているため。
ゲオリクの言葉はダッシュの性格を利用した、単なる言い訳だ―――S伯はおそらく、そう確信したはずです。
常日頃から情にもろいダッシュの性質に苛立ちをつのらせていることと、先程ドア越しに聞こえたゲオリクの声が
感じまくりノリノリの色っぽい喘ぎ声だったことも、彼の確信に拍車をかけたに違いありません。
そうなるともう、嫉妬深く独占欲の強いS伯のこと。勝手に自分の部下に手を出されたとあって、内心はらわたが
煮えくり返ったことでしょう。いかに相手が、かねてからのお気に入りのウルフガングの息子であったとしても。
否、逆に、自分の心をいつまでも捕らえて離さないあのウルフガングの息子だからこそ…なのかもしれません。
恋というのはそもそも理不尽で、自分の意思ではコントロールできないものです。S伯にしてみれば、「また私は
あのザベリスク家の者に心を乱されるのか」と、苦い思いで一杯だったかもしれません。
結社に戻ってからダッシュを罰したのは「ゲオリクの誘惑を拒みきれなかったから」だと思いますが、彼の姿を
自分自身にも投影してしまい、どうしようもない苛立ちにかられる。更にそれをダッシュに指摘されたことで逆上
し、必要以上に厳罰を科したのではないかと思われます。
元々自分に対して反抗的なダッシュが、ゲオリクに丸め込まれたことで、その態度をますます強めてしまって
いる…というのも、S伯にとっては許しがたい屈辱だったことでしょう。
自己中心的かつ寂しがり屋な人間ほど、自分が好意を持っている人同士が仲良くしている姿を見て、疎外感を
感じずにいられず、理不尽な怒りをつのらせてしまうものなのです。
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以上、S伯の心境にたって、独断と偏見を交えながら考察してみましたが、いかがでしたでしょうか。
こうして考えてみると、意外にS伯の言動は筋が通っているというか、ダッシュが「無茶苦茶じゃないですか!」と
抗議するほどには無茶苦茶でもないことが分かります。
彼はその場その場の行動が唐突で突飛なのではなく、そもそもの論理の起点や思考回路がかなり常人と
かけ離れているため、必然的に一般常識を覆す結論に落ち着いてしまうだけなのです。
(それを無茶苦茶と呼ぶのではないか、とのツッコミはここでは勘弁してあげてください)
開発スタッフ様をして「根っからの悪人」と言わしめる、悪の権化ジョン・モンターギュ・サンドイッチ伯爵。
しかしながら彼の性質は、本来人間の持つ悪意と弱さに象徴されており、ある意味ではとても理解しやすい人
と評価せざるを得ません。
そんな彼を、これからも生温かく見守ってあげたいものです。ダシュゲオダシュを愛でる片手間にですが。
最後になりましたが、この膨大かつ無意味な検証にお付き合い下さった方。
もしもいらっしゃいましたら、貴方様は神のごとく広大な御心をお持ちです。心より感謝を捧げます…!!!
そして一番無茶苦茶なのは、S伯よりも誰よりも、この文章をものの2時間弱で書き上げた私自身だと思います。
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